働き方改革の推進
2019年(令和元年)は「働き方改革元年」と呼ばれ、令和時代のスタートとともに日本における働き方改革のブームが起きました。しかし、多くの企業では「働き方改革=残業時間を減らすこと」と考えられており、日本での本当の働き方改革はなかなか進んでいません。
一方で、日本では少子高齢化が急速に進んでおり、中小企業にとって人材確保が喫緊の課題となっています。中小企業の経営者から「良い人が採用できない」「入ってもすぐに辞めてしまう」という声をよく聞きます。
今の若者は働く上で「働きやすさ」を重視します。企業が優秀な人材を採用して定着させるためには、社内の意識改革や業務の見直しなど、本当の働き方改革を行うことが必要です。働き方改革は、残業削減だけではありません。誰もが働きやすい職場にすることで、社員のモチベーションがアップして生産性が向上し、企業の業績も向上します。
実際に働き方改革を進めて離職率が大幅に低下し、さらに残業時間が減って業績を伸ばした中小企業の事例が多数あります。働き方改革は、少子高齢化が進む日本社会の中で、中小企業が勝ち残るための経営戦略と言えるでしょう。働き方改革は先手必勝ですが、進め方を間違えると逆効果になる可能性があります。ぜひ御社でも働き方改革の進め方を学び、最初の一歩に取り組んでみませんか。
コラム
「ワーク・ライフ・バランス」の本当の意味は?
2007年に官民トップ会議において「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」が策定されました。それによると、仕事と生活の調和が実現した社会とは「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」です。
その時期にちょっとしたブームになったので、言葉自体はかなり知られています。しかし日本では、多くのビジネスパーソンがいまだに仕事中心の長時間労働生活から脱することができていません。それは、長時間働いている人が高く評価される企業風土や、高度成長期から続いている強い男女の役割分担意識、「ワーク・ライフ・バランス」の意味が誤解されていることなど、多くの要因が考えられます。
特に「ワーク・ライフ・バランス」に対して、仕事はほどほどにして私生活を重視する、仕事と私生活を半々にしてバランスを取る、という誤ったイメージを持っている方が多くいます。ワーク・ライフ・バランスの本当の意味はそうではなく、仕事も私生活も充実させることで双方に相乗効果をもたらす、そういう生活のイメージなのです。仕事の効率を高めて定時間内で成果を出すことで、子育てなどの私生活にも注力し、その経験が仕事のスキルアップにつながる、そういう生活を目指そうというものです。
そして社員自身が理解していても、企業の経営層や管理職が古い昭和の考えのままでワーク・ライフ・バランスを理解していないと、なかなか行動を変えることができません。ですから、経営トップが率先垂範で自らワーク・ライフ・バランスを意識した生活を送るとともに、積極的に社員に働きかけていくこと、すなわち「イクボス」になることが重要なのです。
実際にそのようなイクボス推進企業では社内制度がうまく活用され、効率的な働き方を意識しながら社員がみんな生き生きと働いています。そして、すべての企業で業績向上につながっています。そういう意味で、ワーク・ライフ・バランスの推進は企業の経営戦略と言うことができるでしょう。